Canonical Asia Business Tour 2006の一環として、2006年2月3日に六本木のグランドハイヤット東京でミーティングが行われました。以下はそのサマリです。翻訳は、ミーティング当日に通訳をしてくださった鈴木和博さんによるものです。

まず、Ubuntuの創設者であるマーク・シャトルワース氏から、UbuntuとCanonical社および今回のアジアツアーの関して、以下のような話がありました。

今回のツアーの目的は、アジアにおけるUbuntu知名度を高めること、政府や教育機関、ハードウェアベンダやシステムビルダにUbuntuを紹介することである。

これまでUbuntuを維持してきたが、サポートビジネスを立ち上げていくことにより、Ubuntuを自立させていきたい。

次のバージョンはサポート期間が延長され、デスクトップが3年、サーバが5年になる。

Ubuntuの技術認定を設ける計画がある。

この後、フリーディスカッションが行われました。以下はその要約です。

(参加者) Ubuntu 5.10をサーバタイプで導入しましたが、サーバ版というよりはデスクトップのGUI無し版という感じで物足りません。今後、サーバ版を改良していく計画はありますか?

(シャトルワース氏) 次のリリースでは、デスクトップ版とは別にサーバ版のカーネルを用意することを予定しています。メールサーバ、DBサーバ、LAMPサーバというような用途ごとにプロファイルを用意することで、簡単にインストールできるようにすることも考えています。

(参加者) UbuntuはGentooとちがってバイナリパッケージを配布するディストリビューションですが、カスタマイズがきかない部分についてどういう選択をしますか?

(シャトルワース氏) まずは一般的につかわれているものを判断して、管理者が簡単に使えるようなものにしていきたい。ただ、すべての人を満足させることはできないので、ほとんど標準のパッケージを使いつつ、必要なものだけカスタムビルドしたものを使うという形を考えています。

(参加者) パッケージ管理が厳しいと感じています。具体的には、qmailを入れている環境でcourier-imapをインストールしようとすると、qmailを消してpostfixがインストールされるというようなことが起こりました。

(シャトルワース氏) コアのパッケージを使う場合、バーチャルパッケージの仕組みでそういった問題は起こらないようにしています。couriere-imapはmail-transport-agentに依存し、postfixや他のメールサーバはmail-transport-agentを提供しているので、そういった問題は起こりません。

(参加者) qmailが、ライセンス上Ubuntuのコアに含めることができないのが原因だと思いますが、UbuntuはDFSGにどう関わっていきますか?

(シャトルワース氏) いくつかの面においては、私たちはDebianと一致しています。例えば、プロプライエタリなアプリケーションや、ノンフリーなアプリケーションを、デフォルトのUbuntuシステムに含めることはありません。だから、qmailをCDの中に入れるということはありません。そうしたソフトウェアを絶対使わないという姿勢ではありませんが、積極的に採用するということもありません。Debianと違ってくるのは、例えばオープンソースではないドライバを含めるということです。これは、私たちができるだけ多くのハードウェアでフリーソフトウェアを動作させることが重要だと考えているからです。

(参加者) 自分は技術的なことは分かりませんが、マイクロソフトが嫌いなのでLinuxデスクトップの推進に興味があります。

(シャトルワース氏) 多くの人達がLinuxに対してそういう形で熱くなっているのは危険だと考えています。状況が変ったら(Linuxデスクトップが普及したら)、私たちを結び付けるものがなくなってしまいます。私が注力したいのは、フリーソフトウェアのよいところを宣伝することです。

(シャトルワース氏) 日本においてフリーソフトウェアはどのように特徴づけられますか?

(参加者) フリーソフトウェアを扱った雑誌が多く売られているなど、情報の発信はしやすい環境にあります。

(出版関係者) 雑誌には、Windowsユーザ向けの記事が望まれています。ただし、アンケートではエンタープライズ向けの記事に対するリクエストが多いです。

(参加者) 日本の場合、Windowsで構築されたシステム多くあるという状況です。中小零細のシステム屋が、Windowsだと価格で太刀打ちできないのでLinuxをかつぎ始めているという状況にあります。

(参加者) Linuxは、やはりデスクトップよりもサーバとして注目されています。Windowsよりも安っぽいイメージがあること、LinuxではなくWindowsがプレインストールされたマシンが広く売られていることなどが原因だと思われます。プレインストールマシンを出したり、政府がLinuxを推進することがデスクトップとして普及させるのに効果的だと思います。

(参加者) 日本ではブランド指向が強く、お金を出せばそれだけのものが手に入るという風土があります。ブランドイメージさえつけることができれば、うまく普及させていけるのではないでしょうか。

(参加者) 日本ではTurbolinuxがデスクトップに絞ったディストリビューションを出し、プレインストールマシンを販売しています。また、産業総合研究所が作っているKnoppix日本語版が、教育機関で利用されるなど広まりつつあります。

(シャトルワース氏) 日本語入力などが、きちんとできる形にしていこうと思っています。なにをすれば、日本語をサポートしていけるのかを押さえていきたいです。

(参加者) 私は、Ubuntuの日本語カスタマイズ版(ubuntulinux.jpで配布しているISO イメージ)をきっかけにUbuntuを使うようになりました。日本語版の成果が早くとりこまれることを望んでいます。

(小林) 今、中国や韓国のUbuntuユーザと協力して、SCIMをUbuntuにとりこんでもらうよう活動しています。(注)この後、SCIMがUbuntuのコアに採用されることになりました。

(参加者) SCIMは、日本語以外の言語にもしっかり対応しているので一番良いと思います。複数のInputMethodを採用するのはやめたほうが良いでしょう。

(シャトルワース氏) いろいろな問題がからんでくると思いますが、マイクロソフトのやり方を参考にするのが良いと思っています。言語パックを導入すれば、その言語をすべてサポートするという形です。Ubuntuにも言語パックがありますが、今のところ翻訳をインストールするという意味合いが強いです。今後、InputMethodやその他必要なものを含めていきたいと思っています。

(参加者) (ubuntulinux.jpで配布している)日本語カスタマイズ版ではPowerPC版が提供されていませんが、是非欲しいです。

(シャトルワース氏) 国ごとでディストリビューションを作るなどができるインフラを作り、コミュニティでやっていく方に無償で提供することを計画しています。今は、それぞれの国の人が自分でシステムを用意して作る形ですが、これができれば、PowerPCに対応したものを作ることも簡単になるでしょう。

(参加者) Ubuntuが細分化しないように、今使われているものをなるべく中に入れる形で進めて欲しいです。

(シャトルワース氏) 各国で使われているものを中に入れるということも大事ですが、ローカル版を作ることも重要だと思っています。例えば、ブラジルでは音楽が非常に重要視されるので、音楽に重点を置いたディストリビューションにしたいという要求があります。もちろん、コミュティが細分化されて無駄がでるのは避けていきたいと思っています。

(小林) 最近になって、バラバラで活動していた日中韓のユーザが、協力してUbuntuのCJKサポートを良くしていく形がとれ始めてきました。

(シャトルワース氏) 多くの国で、強いコミュニティができていると感じていますが、Ubuntuコミュニティと関わりなく活動しているように感じられるので、コミュニティを結び付けるようにしていきたいです。

(シャトルワース氏) 主にサーバを対象に、3ヶ月後に24時間体制で電話サポートを開始する予定です。デスクトップに関しては、一般のユーザがUbuntuを使うようになるには時間がかかると思います。日本については他の国に比べて(LinuxおよびUbuntuの)需要が少なく、準備も整っていないので、多くの投資する段階ではないと思っています。

(参加者) 一般ユーザがデスクトップとして使う場合、DVDや動画が見れないことが問題であると思います。

(シャトルワース氏) Ubuntuには、DVDの再生機能はデフォルトでは入れていません。Ubuntu派生の商用ディストリビューションで、DVDの再生機能を持つものを作っている人達はいます。地域によっては、それらが適切であると思います。現在、特許の対象となっていないコーデックをUbuntuで扱えるようにする作業を進めています。

(シャトルワース氏) 日本語や韓国語のフォントやインプットメソッドなどを、ひとつのCDに入れることは容量の制限から難しいという問題があります。インストール時にはフォントだけ入れて、入力機能に関してはあとから追加するという形はどうでしょうか。

(参加者) もし、インストールしてすぐに日本語が入力できなければ普通のユーザは壊れていると思ってしまので、インストール時に両方入れるべきだと思います。日本はブロードバンドが普及しているので、インストール時にインターネットからダウンロードしてインストールするという形で問題ないと思います。もしくは、DVDイメージにしてすべて入れてしまうのが良いと思います。

(シャトルワース氏) 日本でUbuntuをさせるならば、サーバ向けを中心に据えるのが良いと思いますか?

(参加者) サーバはすでに普及してしまっているので、企業向けのデスクトップが良いと思います。私は外資系の企業で働いていますが、 オープンオフィスが良くなってきたことなどから、デスクトップにオープンソースソフトウェアを採用したいという動きが出てきています。外資系企業はコストを下げることを重要視するので、採用されていくのではないかと思います。

(参加者) サーバも良いと思いますが、企業向けのデスクトップも、メンテナンスもしやすいですし、DVDやメディアファイルが再生できなくても問題ないので、良いと思います。

(参加者) フリーソフトウェアの概念に興味を示さない人たちにも、どんどんアピールしていくべきだと思います。Debianでは難しくてもUbuntuならばそういう人たちにも使えると示すべきだと思います。

(参加者) Ubuntuの人道的な面(エンタープライズ版を作らず、すべての人がすべての機能を使えるといった面)を前面に押し出すのも良いのではないでしょうか。

(シャトルワース氏) それだと、ビジネス的には弱いイメージになりませんか?

(参加者) 弱くなるということは無いと思います。

(参加者) 日本で使う上で、文字のエンコーディングが大きな問題になると思います。例えば、EvolutionはヘッダがUTF-8のメールを送りますが、日本ではISO-2202-JPが標準なので文字化けすることがあります。たとえば、携帯電話やHotmailにEvolutionでメールを送信すると、日本語が文字化けします。

(シャトルワース氏) 他の言語ではUTF-8ですべてうまくいくので、興味深い問題ですね。

(参加者) 日本はUTF-8ができるより早くにコンピュータが普及したので、それが災いしているのでしょう。

(シャトルワース氏) そういった問題に対処するためにも、ローカルディストリビューションというのは重要だと思います。

(シャトルワース氏) 日本にオフィスを置くことについてはどうでしょうか。

(参加者) 必須でしょう。

(シャトルワース氏) 日本にアジアの拠点を置くことについてはどうですか。

(参加者) 近隣の諸国との政治的な摩擦などもあるので、香港などでやるほうが良いでしょう。

(参加者) もちろん、日本で普及させるには東京にも拠点は必要です。

(参加者) 学校をターゲットにするのも良いと思います。

(参加者) 日本の場合、文教の市場は特殊です。指定された業者しか参加できないような仕組みになっており、そういった業者と連携するには日本独特の商慣習にあわせる必要が出てきます。そういう意味で、日本に信頼できるパートナーを作る必要があると思います。

(参加者) Linuxサーバに関しては、ほとんどRed Hatが独占状態です。なかなか他のものにシフトするのは厳しいという状況にあります。

(シャトルワース氏) Debianはどの程度知られていますか?

(参加者) (普通の企業には)ほとんど知られていないといって良いでしょう。

(小林) Debianの名前を冠した企業が無いという点で、(サポートに関して安心感がないため)Red Hatや他のディストリビューションよりも採用されにくいという面はあると思います。

(参加者) 日本の企業を攻めるには、派手なプロモーションをするのがいいかもしれません。

(シャトルワース氏) デスクトップを前面にプレゼンテーションするのが良いでしょうか。それとも会社のほうを前面に出すのが良いでしょうか。

(参加者) 企業に信頼してもらうには、会社を前面に出して安心して使えると思ってもらうことがより重要だと思います。

(参加者) 日本では、現在、シンクライアントを導入してコストを下げること、セキュリティレベルを上げることが注目されているので、そこを狙うのも非常に重要だと思います。

UbuntuJapaneseWiki: Events/AsiaBusinessTour2006Feb (最終更新日時 2013-11-15 16:31:14 更新者 JunKobayashi)