概要

このスタイルガイドには、ソフトウェアを翻訳する上で知っておくべき情報を記載しています。例えば、翻訳すべき場所、翻訳すべきでない場所、複数形(plural)の扱いといった、Launchpad Translations(Rosetta)や翻訳ツールを使った翻訳作業を行う上で気にするべき事柄を詳しく説明しています。

Launchpad Translationsの使い方やヒントなどは記載していません。そのような情報が必要であれば、「Launchpad上で翻訳を行うには」などをご覧ください。

各言語の翻訳品質を高めるためにも、新規に翻訳をしようとする人はこのスタイルガイドに従うようにしてください。

なお、この文章はLaunchpad HelpにあるGeneral Translation Guideを元に、日本語翻訳者向けに加筆・修正を行って掲載しています。

翻訳の品質を確認する基本的な方法

翻訳作業中は、以下の基本的なルールに従ってください:

  • このスタイルガイドに記載されている情報をよく読み、常に他の翻訳者と連携を取るようにしてください。
  • 翻訳が完了したらもう一度読み直し、誤字脱字がないか、意味が通っているかを確認してください。
  • 翻訳した結果が、あなたやあなたの母親にとって意味のわからない文章になったのなら、それは明らかに何かが間違っており、修正する必要があります。

複数形(plural)の扱い

英語は単数形と複数形(plural)の二つを明確に区別して扱います。日本語は基本的に区別しません。言語によっては、二つ以上の複数形を持っているものも存在します。

言語ごとに異なる複雑な複数形を扱えるように、翻訳ファイルには特別な書式が存在します。

例:

元の書式:
msgstr[0] %d thing
msgstr[1] %d things
msgstr[2] %g things

ルーマニア語は、三種類の形式が存在します:
msgstr[0] %d lucru
msgstr[1] %d lucruri
msgstr[2] %d de lucruri

日本語は区別しませんので、すべて同じ形に翻訳します:
msgstr[0] %d 件
msgstr[1] %d 件
msgstr[2] %g 件

アクセラレータキー/ショートカットキー

開発言語やフレームワークによって、メニューアイテムにおけるキーボードショートカットの指定方法が異なります。よく見かける形としては、アンダースコアが与えられているもの(例:"Save _As"/"別名で保存する(_A)")やアンパサンドが与えられているもの(例:"Print previe&w"/"印刷プレビュー(&W)")などがあるでしょう。

機能毎に独立したショートカットを与えることが大事です。少なくとも翻訳時に、ソフトウェアの動作と割り当てたいショートカットの一覧を書き出しておくべきでしょう。そしてショートカットとして使いたい文字の前に、アンダースコアやアンパサンド、その他のコントロール文字を配置することになります。異なるオプションやタブ、チェックボックスなどに同じアクセスキーが割り当てられている場合、それらの全てに順番にアクセスできるかどうかショートカットを何回か押すべきでしょう。

翻訳前に割り当てられているショートカットキーは、英語由来であることが多く、英語圏の人間にとっては直感的な文字が割り当てられています(例えば検索なら"Search"の"S")。同時に、使える文字数の制限上、無理やりな部分に割り当てられている場合もあります(例えば印刷プレビューなら"preview"の最後の"w"など)。いずれにせよ、そのメニューアイテム内にある「いずれかの文字」に割り当てられています。そのため、英語でのメニューは"Search"や"Print preview"といった具合に表示され、日本語の「検索(S)」や「印刷プレビュー(W)」のように、ショートカットキーが独立して表示されるわけではありません。

日本語のメニューは漢字・仮名・アルファベットが入り交じって表示されるため、このような直感的なショートカットの表示にすることは不可能です。そこで日本語に翻訳する際は、ショートカットの再割り当てを行わず、全て原語と同じショートカットキーを割り当てるようにしてください。また、キーの表示はメニューアイテムの後ろに"(_A)"のように、キーは大文字にし、半角括弧でくくる、といった形で追加するのが一般的です。

メニューアクセラレータキーの例:

翻訳前:
_File
New &Tab
~Downloads

翻訳後:
ファイル(_F)
新しいタブ(&T)
ダウンロード(~D)

翻訳すべきでない単語

ここでは、翻訳すべきでない単語(翻訳してはいけない単語)とその見分け方について説明します。

翻訳してはいけない部分は、そのソフトウェアの開発者がコメントという形で注意書きを記している場合も多々あります。翻訳する際は常に、そのようなコメントがついていないかどうかを確認してください。

データのプレースホルダーや変数名

大抵の開発言語は、"%s"や"%d"といった変換指定子(プレースホルダー)を使って、開発者がデータを文字列に挿入できる仕組みになっています。"%(variablename)s"や"$name"、"${name}"といったより複雑な形式も見かけるかもしれません。こういった変数は翻訳せずに、元の文字列と同じ順番で、さらに翻訳された結果が意味の通る形で、翻訳後の文字列の中に配置してください。

よく分からない場合は、他の翻訳者に相談してください。

例:

元の書式: I found $name ethernet device.
間違った例: $名前 イーサネットデバイスが見つかりました。
正しい例: $name イーサネットデバイスが見つかりました。

元の書式: Delete %(name)s ?
間違った例: %(名前)たち を削除しますか?
間違った例: %(名前)s を削除しますか? 
正しい例: %(name)s を削除しますか?

書式設定やXMLタグ

翻訳対象の文字列にある一部の単語を修飾するために、<strong>といったHTML/XMLタグが使われている場合もあります。これらのタグは翻訳せず、タグが対してしている単語を訳したものに対してそのまま利用するようにしてください。また、タグの閉じ忘れにも気をつけてください。XMLなどだと、見かけないタグが使われている場合もあるかもしれませんが、それも同様に翻訳しないで使ってください。

例:

元の書式:  <strong>File name</strong>
間違った例: <強調>ファイル名</強調>
正しい例: <strong>ファイル名</strong>

プログラムに渡すパラメータ

コマンドラインオプションのような、プログラムにそのまま渡すべきパラメータは翻訳してはいけません。

例:

元の書式:  "The command line options are:\n"
            "       --quick         speeds up the processing\n"
            "       --slow          slows everything down."
間違った例:"コマンドラインオプション:\n"
            "       --高速          高速に処理します\n"
            "       --低速          ゆっくり処理します"
正しい例:  "コマンドラインオプション:\n"
            "       --quick         高速に処理します\n"
            "       --slow          ゆっくり処理します"

TRUE/FALSEやGTK定数

"TRUE"や"FALSE"のような文字列や、GTKの定数である"gtk-ok"や"gtk-cancel"、"toolbar-icon"は翻訳すべきではありません。

こういう文字列が翻訳ファイル中に存在する場合は、おそらくソフトウェア開発者によるミスでしょう。ソフトウェア開発者に連絡をとり、可能であれば削除するように進言してください。

GCONFの設定キー

例:

元の書式: The port which the server will listen to if the 'use_alternative_port' key is set to true.
         Valid values are in the range from 5000 to 50000.
間違った例: '別のポートを利用する'がtrueに設定されている場合、そのサーバのそのポートがLISTENになります。
         正しい値は、5000から50000までの間です。
正しい例: 'use_alternative_port'がtrueに設定されている場合、そのサーバのそのポートがLISTENになります。
         正しい値は、5000から50000までの間です。

文脈(Context)指定子

古いGNOMEアプリケーションの翻訳をするとき、元の文字列に文脈(Context)指定子が含まれている場合があります。詳しいことは、次のページをご覧ください: http://leonardof.org/2007/12/01/context-in-gnome-translations/en/

例:

元の書式: "Orientation|Top"
間違った例: "方向|上"
間違った例: "Orientation|上"
正しい例: "上"

そのような文字列に遭遇した場合は、バグとして登録し、ソフトウェアの開発者に連絡を取ってください。

日本語特有の問題

マニュアルでよく使われる表現

Your system

英語表記においては、「このコンピュータには〜〜」という意味で「Your system 〜〜〜」といった表現を用います。このような場合「あなたのコンピュータ」と訳すべきではなく、「このコンピュータ」と訳してください。

You can 〜〜 to 〜〜

マニュアルなどでは、以下のような「You can 〜〜 to =====」形式の表現が多く出てきます。

  You can use this command to search for information.

この表現を訳出する場合、学校教育的な和訳を行うと、非常にわかりにくい表現になります。

良くない訳:あなたは情報を探すために、このコマンドを用いることができます

良い訳:このコマンドを用いることで、情報を探すことができます

これは日本語と英語の間の文法構造の違いによる問題です。以下の2点を考慮してください。

  • 1) 未来・可能形の場合、主語は訳さなくてよい。
    • このような表現の場合、"you"は二人称ではありません。英語の二人称には、日本語における「不定の主体」と同等の機能があります。
    • 日本語では不定の主語は省略されるのが通常ですので、文脈的にあきらかに自明な場合は語として省略してください。
  • 2) 「You can 〜〜 to =====」は語順通りに訳してもよい。
    • こうした表現は、「=====するために〜〜する」と日本語に訳出されがちですが、こうした"can 〜〜 to ====="は、「When you use 〜〜, you could =====」です。
    • このような場合は、「〜〜をすると、=====できます」と訳した方が明快な日本語になります。

このスタイルガイドに新しい注意点を提案するには

以下は、オリジナルのスタイルガイドやその翻訳版に掲載した方がいいアイデアやヒントの一覧です:

  • どのパッケージを集中して翻訳すべきかの説明。優先度や翻訳期限などなど。
  • 全ての翻訳者が相談できる媒体の開設や提供。フォーラムやメーリングリスト、IRCチャンネルなど。主にチームワークのサポートや相談や提案への対応。
  • 現在翻訳中の他のチームの情報や、上流プロジェクトのリンクの提供。他のチームと連絡を取り合い、その作業結果と常に同期できるように。
  • 各言語ごとに使っている文法上の流儀や時制の決定。
  • 例えばT-V distinction(親称)のような、公式・非公式を分ける人称の利用方法。
  • 全ての翻訳者が使うべき専門用語集や辞書の決定。統一感のある翻訳にするためには便利でしょう。
  • よくある問題とその説明や解決方法を記載したセクションやページ。
  • 翻訳すべきでない単語の例の一覧が載っているセクションやページ。

UbuntuJapaneseWiki: Develop/TranslationGuide/Styles (最終更新日時 2012-01-10 11:49:04 更新者 匿名)