Ubuntu 8.10について
オープンソースコミュニティによって作成された最新の素晴らしいソフトウェアを提供できることを嬉しく思います。最新の成果であるUbuntu 8.10には、数多くの素晴らしい新機能があります。このページはUbuntu 8.10 Techinical Overviewの日本語訳です。
Ubuntu 8.04 LTSからのアップグレード
Ubuntu 8.04 LTSからアップグレードするなら、とても簡単なアップグレード方法があります。
Ubuntu 8.10の新機能
GNOME 2.24
下記のような新機能や数多くの不具合修正などを含んだ、最新のデスクトップ環境であるGNOME 2.24を提供します。
Christian NeumairによってNautilusファイル・マネージャがタブをサポートし、Stefano Teso、Cosimo Cecchi、Christian Neumair、その他の人々によって「場所」サイドバーにリムーバブルドライブの取り出しアイコンが配置されるようになりました。
Paolo BacchilegaとChangwoo Ryuによって、File Roller 書庫マネージャがALZ、RZIP、CAB、TAR.7Zのファイルタイプもサポートするようになりました。
X.Org 7.4
X.Orgの最新の安定版である、X.Org 7.4がIntrepidで利用可能になりました。このバージョンでは、マウスやキーボード、タブレットのような入力デバイスを、システム稼働中でも、何か操作することなく抜き差しできるようになっています。これにより、多くのユーザにとって/etc/X11/xorg.confファイルの編集による設定が必要なくなりました。また、Xが起動失敗したときにより解決しやすい、新しいフェイルセーフX機能も導入されています。
X.Org 7.4では、2つの古いnvidiaバイナリドライバが利用できなくなっています。そのためこれらドライバは対応したオープンソース版のドライバに自動的に切り替えられます(訳注:詳しいことはリリースノートを参照してください)。
Linuxカーネル 2.6.27
Ubuntu 8.10は、より多くのハードウェアのサポートとより多くのバグフィックスが行われた、Linuxカーネル2.6.27が採用されています。
暗号化されたプライベートディレクトリ
Michael Halcrow、Dustin Kirkland、Daniel Baumannによって、ホームフォルダに暗号化された秘密のフォルダ(英語)を作成できるecryptfs-utilsパッケージが、Ubuntuのmainコンポーネントとして採用されました。
アプリケーション → アクセサリ → 端末を実行し、以下を入力することで、この新しい機能をテストすることができます:
sudo aptitude install ecryptfs-utils
ecryptfs-setup-private
ゲストセッション
ユーザ切り替えパネルアプレット(fast-user-switch-appletパッケージ)に、Martin Pittによってゲストセッションと呼ばれる項目が追加されました。これは、パスワード不要の、権限が制限されたユーザアカウントを一時的に作成します。このアカウントは他のユーザのホームディレクトリにアクセスすることができず、永続的にデータを保存することもできません。これにより、ちょっとしたメールのチェックとして他の誰かにラップトップPCを貸すことを十分に安全な形で行うことができます。
Network Manager 0.7
Ubuntu 8.10には、Dan Williams他の人々によるNetwork Manager 0.7を収録しています。このバージョンでは長い間待ち望まれていた、以下のような機能を備えています:
- システム全体に反映される設定(接続するためにログインする必要がありません)
- 3Gネットワークへの接続(GSM/CDMA)の管理
- 同時に複数の有効なデバイスの管理
- PPPやPPPoE接続の管理
- 静的IP設定のデバイス管理
- デバイス向けの経路管理
より詳しい情報は、Network Manager wikiを参照してください。
DKMS
Ubuntu 8.10には、Dellが作成した、新しいカーネルが導入されたとき自動的にカーネルドライバの再構築を行う、DKMSも導入されています。これにより、ドライバパッケージの対応を待つことなく、カーネルパッケージのアップデートを利用できるようになり、また、カーネルのアップデートによって、サードパーティドライバが動作しなくなることももなくなるでしょう。
Samba 3.2
Samba 3.2で多くの新しい機能が追加されています。なかでも以下の機能が挙げられます:
- 分散ファイルシステムのサポート(訳注:Sambaのバックエンドとして、Global File Systemなどの分散ファイルシステムを利用できるようになります)
- 暗号化されたネットワークへの転送
- IPv6のサポート
- 現在のMicrosoft Windows (TM)のクライアントやサーバとの互換性の向上
PAM 認証フレームワーク
Ubuntu 8.10では、pam-auth-updateと呼ばれる新しいツールを導入しました。これにより、デスクトップとサーバの間で、PAM認証設定を簡単に管理できます(Steve Langasekによって導入されました)。PAMモジュールを提供しているパッケージは自動的に設定が行われ、ユーザはsudo pam-auth-updateを実行することで、これら認証設定を適用することができます。
より詳しい情報は、Ubuntu wikiを参照してください。
Totem BBC プラグイン
Ubuntu 8.10はBBC(訳注:英国の放送局)から、フリーのデジタルコンテンツを取得するTotem ムービープレイヤー用のプラグインを同梱しています。これを有効にするにはTotemを開始(アプリケーション -> サウンドとビデオ -> ムービープレイヤー)し、プラグインを有効(編集 -> プラグイン -> BBC content viewer)にして、"プレイリスト"とラベルがついたドロップダウンリストから"BBC"を選択します。
この機能を開発してくれたBBCとCollaboraに感謝します。
サーバの仮想化
python-vm-builder
これはubuntu-vm-builderを完全に書き直したもので、テンプレートベースのプラグインをサポートしています。プラグインにより、他のディストリビューション(訳注:将来的にUbunt以外のディストリビューションの仮想マシンを作成する機能を実装する予定がありますが、現在はまだ機能していません)のサポート・ユーザインターフェース・追加機能(たとえば、インストール後に自動実行するタスクの指定(--exec, --copy)や、最初のブート時に自動実行する操作の指定(--first-boot, --first-login))といった機能を追加することができます。これは以前のコマンドラインオプションと互換性があり、さらに、より良質なレポートを生成する機能があります。
Python-vm-builderを使うことにより、新しい仮想マシンイメージを対話的操作なしに数分で作成できます。開発者やソフトウェアベンダー、システム管理者にとって、とても役に立つでしょう。詳しいことは、チュートリアルを参照してください。
Xenのゲスト
XenのゲストOSとしてUbuntuを利用するためのオプションが、標準のサーバカーネルに含まれるようになりました。python-vm-builderで仮想マシンを構築するときに選択できます。
サーバインストーラの新しいオプションであるJeOS
私たちのビルド作業を単純にすることと、実ハードウェアにJeOSをインストールする際の混乱を避ける目的で、JeOSは専用のISOファイルでは提供されなくなりました。代わりに、サーバインストーラーの最初の画面でF4を押し、"Install a minimal virtual machine"オプションを選択することで、JeOSをインストールすることができます。
mainコンポーネントの注目すべきパッケージ
以下のパッケージがmainコンポーネントに取り込まれ、サーバ管理者にとって特に興味深い個々のオプションがサポートされるようになりました。
- Sun Java OpenJDK 1.6 - Java開発キットのオープンソースによる実装
- Apache Tomcat 6 - Javaサーブレット・コンテナ
- ClamAV - メールサーバと連動可能なウイルス検出エンジン
SpamAssassin - メールサーバと連動可能なSPAM検出エンジン
起動時のデグレードRAID設定
Ubuntuをインストールしたシステムでは、これまではルートファイルシステムが「デグレードした」(訳注:RAID1やRAID5などで、構成ディスクの1台が壊れた状態を「デグレード」や「縮退」と呼びます)状態では、initramfsが提供するbusyboxプロンプトを表示していました。これは二次災害によってデータが失われることを避け、管理者が必要な作業を行うための安全な選択肢ではあるのですが、遠隔地で稼働しているサーバでは対処のしようがなく、問題の原因となっていました。システム管理者はマシン上で以下のコマンドを実行しておくことで、ディスクアレイの状態に問題があってもブートを継続することができる、継続的な設定を行えるようになりました:
echo "BOOT_DEGRADED=true" | sudo tee -a /etc/initramfs-tools/conf.d/mdadm
加えて、bootdegraded=[true|false]の引数をカーネルの起動時オプションとして指定することも可能です。
serviceコマンドのサポート
各種デーモンを管理するためのserviceコマンドがUbuntuでも標準で利用できるようになったことで、FedoraやRedHatの管理者はより快適になるでしょう。sudo /etc/init.d/<service> [start|stop|restart]といった伝統的なプロセス管理方法に加えて、sudo service <service> [start|stop|restart]を使うことも可能になりました。
加えて、多くの標準的なサービスはstatusオプションをサポートをするようになりました。これにより、例えばsudo service postfix statusとすることで、サービスが実行中かどうかを確認できます。
OpenLDAPにおける''cn=config''の使用
OpenLDAPサーバの標準インストールでは、変更が発生した設定の複製をLDAP間で自動的に同期することができるcn=config拡張を使用するようになりました。
サービス認識したUncomplicated Firewall (ufw)
一般的なサービスであれば、そのサービスが推奨する適切なポート番号をufwへ通知できるようになりました。それにより、管理者はufw allow <service>といった簡単なコマンドを実行するだけでポートを開くことができます。
コンパイラのセキュリティ強化機能
セキュリティに関する機能と警告の表示(英語)に関するgccのコンパイラオプションが標準で有効になりました。これらのオプションは、ビルド時に警告やエラーを発することで、多くの未知の脆弱性が攻撃可能な状態でビルドされることを阻止します。
位置独立実行形式でコンパイルされたネットワークサービス
実行可能形式のメモリ上の位置をランダム化するカーネルの機能をうまく利用するために、apache2、bind9、openldap、postfix、cups、openssh、postgresql-8.3、 samba、dovecot、dhcp3など多くのネットワークサービスが位置独立実行形式(PIE)でコンパイルされています。これにより、特定の種類のセキュリティ脆弱性を使った攻撃を受けにくくなります。
USBデバイスからのインストール
これまでUbuntuはCD/DVDイメージのみを提供してきました。しかしながら、USBメモリに比べるとCD/DVDは遅く、可搬性や利便性に劣ります。そこで、USBドライブにUbuntuイメージを保存できる簡単なアプリケーションを作成し、Ubuntuのインストールやデータの保存をUSBメモリ上で行い、USBメモリを持ち運ぶことでどこでもUbuntuを利用できるようになりました。
既知の不具合
Ubuntu 8.10にはリリースまでに解決できなかった、いくつかの不具合があります。詳しい情報は、リリースノートを参照してください。
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